【研究室だより】日本農芸化学会2026での興味深い演題2
2026年3月10~12日に同志社大学今出川・室町キャンパスで開催の日本農芸化学会2026年度大会に参加しました。当社はステロンパワーミックス®の加齢雌性マウスでの結果につきまして、共同研究先と発表を行っています。
学会参加は次の研究シーズを探すことや、現在知らなかったことを学ぶ良い機会です。開催前の要旨にていろいろと興味ある演題を探しておりますと、青森県産業技術センター様のりんご果皮に係る演題がありました。
りんごに関しては、英国に伝わる諺で「1日1個のりんごは医者を遠ざける」ともあり、その健康機能については様々に研究されています。なお、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬(腎臓での糖再吸収を抑制し、尿中に余分な糖を排出して血糖値を下げる薬)も実はりんごから開発ヒントが得られたものです。りんご樹皮・果皮に含まれるフロリジンが強力なSGLT2阻害能を持っていたため、この化学構造を基に有効成分トホグリフロジンがつくられました。開発の経緯がりんご由来の為、製品名として「アプルウェイ」と名付けられています。このネーミングセンスは好きだなあ(なお、現在は販売を終了しており、別の製品名となっています)。
このように天然の植物・食品が医薬品の基になった例は複数あり、抗インフルエンザ薬の「タミフル」もスパイスなどで知られる八角(ダイウイキョウ、スターアニスとも呼ばれます)中に含まれるシキミ酸を出発原料としています。新薬の開発方法の一つとして、植物等に含まれる天然物のチカラを基に開発されたストーリーを紐解くと、日々の実験結果の中にも様々なヒントがあるんだな、と考えさせられます。このヒントをキチンと拾えるように頑張らなくては。
○有機酸を用いたりんご果皮ポリフェノールの抽出と機能性評価(青森県産業技術センター)
りんご果皮はヒペロシド、ルチンなどのポリフェノールを豊富に含みます。これまでは果皮は廃棄物扱いでしたが、ポリフェノール等の有望な供給源でもありますので、様々な活用法が研究されています。青森県産業技術センターでは、食品での利用を前提とした、簡便かつ低コストな抽出技術を研究されています。本発表では、ポリフェノール抽出効率を高める要素を明らかにされておりました。加えて、得られた抽出ポリフェノールを培養細胞で検討した結果、脂肪蓄積抑制、脂肪細胞分化関連遺伝子の発現抑制されたことも発表されました。

この発表では、廃棄物であったりんご果皮から様々なポリフェノールが得られ、それらがメタボリックシンドローム(肥満)抑制に係る機能性食品素材としての産業利用の可能性が示されております。今後、in vivo試験、ヒト臨床試験など研究が進むことで、日々の健康維持に役立つ食品原料となり得ると考えられ、非常に興味深い発表でした。
廃棄されるモノにも有用な成分がたくさん含んでおり、本当に捨てるのはもったいないですよね。当社にもかつお節のダシ抽出後の残渣(これまでは捨てていたもの)を活用した健康食品原料があります。食品の秘めたるチカラを見出す研究だけでなく、自然の恵みを余すことなく使うことも念頭に、今後の研究を進めて参ります。
